人生の最終目標的な本。
2006年の吉岡賞(現在、新建築賞)に輝いた美しい住宅、「阿佐谷南の家」(小川広次さん設計)の住人であるライター中原洋さんによる家づくり奮闘記「体験的 高齢者住宅 建築作法」を一気に読みました。
大学教授である奥様が退職するのを機に、家づくりを決意する(大学から持ち帰らなくてはならない膨大な書籍を収納するため)中原さん。
新しい家への妄想、二転三転する方針(最初は書庫的な建物を考えていたよう)、土地探し、建築家探し、設計打ち合わせ、現場でのこと、引っ越し・・・いろいろなトラブルや困難を乗り越えて完成にこぎつけるまでの一部始終(お施主さん側からの一方的な気持ち)が
・・・建築家に依頼のメールを送り返事を待っている気持ち、設計打ち合せのなかでの、建築家の発言に対するいろいろな感情、見積もり調整を待つイライラ感、どんどん遅れる工期に募る不信感、引っ越し時の苦労・・・
ユーモアも交えて素直につづられています。
設計者の立場からすると、誤解されているなぁというところもあるのですが、それもこれも、設計者側のお施主の気持ち知らず・言葉足らずからくるもの(誠心誠意良いものを創ることに全力を尽くしているのは誰しも同じですが)。
建築関係の執筆を長年続け建築をよく知っておられ、前の住処も有名な「大和町の家」(室伏次郎さん設計)である中原さんでも・・・ですから、設計者が(「建築家」と呼ばれている方々は、またちょっと違うのかもしれませんが)お施主さんの気持ちになって、丁寧にきめ細やかな対応をすることがいかに大切であるか(私自身が施主になった時も、設計者であるにもかかわらず、中原さんと同じような気持ちになったりしましたし(笑))・・・。
この本、高齢者であるご夫婦が、スペシャルな建築家と作り上げた、スペシャルな家(ご本人たちも普通でないスーパーな人たち(笑))でありますので、これから家を建てようという方には参考になりにくいかもしれませんが、70歳を過ぎても仲の良い夫婦の関係がとても微笑ましく(羨ましく?)描かれてもいますので、夫婦での「人生の最終目標的理想の家づくり」への憧れとして読んだら、凄く元気がわいてくる本だと思います。
それにしても、最終的には(予算オーバーし、工期も12か月遅れ(引っ越し後も4か月工事が続いたそう(驚))2軒目の住処も、素晴らしい建築として実現させた中原さんのエネルギー(忍耐力?)には心底感服です。。。
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カウンティング クロウズやフーティー アンド ザ ブロウフィッシュなどに近い、乾いた感じの良質なアメリカンロック。なぜかワンちゃんアートワークつながりでもあります。日本ではこの感じのロックがイマイチ流行りませんが、私は好きなジャンルの一つです。